2025.10.10
私のこと5年生になると、病院実習が始まりました。現場に立つ緊張感や、患者さんとの出会いを通して、「医師になる」ことが、現実味を持って迫ってきました。
中でも心に残っているのは、島根県大田市や飯南町での地域実習での出会いです。
今まで大学病院で見てきた医療とは違って、地域で実践される医療では、そこで生きている人たちの考え方や実際の生活を肌身で感じることができ、もっと広い世界に飛び出したようで、無性にワクワクしたことを覚えています。
地域の現場で働く先生たちは、“そこに住む人たちが何でも相談できる医師”であり、私が漫画で見てきたような理想の医師像がそこにはありました。
医師としての経験や能力は言わずもがなですが、一人の人間として地域に寄り添いながら生きているその姿を目の当たりにして、「かっこいい!」、単純にそう思いました。
診療の合間、とてもお世話になった診療所の先生が、私にこう言ってくれました。
「患者さんを診るだけが僕らの仕事じゃない。地域の人が健康に暮らせるようにすること、それが本当の仕事なんだよ」
この一言には、心を打たれるほどの衝撃を受けました。
その頃、医学部の仲間たちと「何科の医師になりたいか」「研修するのは大学病院か、市中の病院か」などと話しても全く興味が湧かず、逆に少しずつ自分の可能性が狭まっていくような違和感がありました。
「地域の人が健康に暮らせるようにする」ことが真の目的なら、自分は「どんな医師になるか」ではなくても、「医師としてどう生きるか」を考え続けていこう、それでいいんだ。
この言葉がその後の自分の生き方や考え方に、大きな影響を与えることになります。
坂本龍馬記念館