2025.11.05
私のこと2020年4月、COVID-19(いわゆる新型コロナウィルス感染症)が猛威を振るうなか、私は厚生労働省から岡山県庁に出向することになりました。
あのとき、全世界がどうしようもなく混迷していて、行政や医療の現場に身を置く人たちでさえ、何をすればいいのかわからない状況でした。
誰も経験したことのない未知なる危機を前に、私自身も戸惑いながら一歩を踏み出しました。
当時、新型コロナウィルスというもの自体、わからないことが多すぎて、世の中が疑いや不安であふれかえっていたと思います。
そんな中でも、この危機に対して真正面から立ち向かっていく人たちがいました。
一人の人間としてどう生きるか、人間として尊いこととは何かを教えてくれる、心に深く刻まれた出来事が2つありました。
ひとつは、ある病院から退院された、新型コロナウィルス感染症の患者さんとの出会いです。
その患者さんは、「自分は将来、医療従事者になって、これだけお世話になった恩返しをしたい」と、真剣な眼差しで語ってくれました。
もうひとつは、混乱のなかで駆け回る医療従事者の方々の姿を、まじかで見たこと。
患者さんたちが長い入院生活により心も体も弱りきっている状況で、患者さんに寄り添いながら診療や看護にあたってくださった医療従事者の人たちがそこにはいました。
当時は医療従事者に対する誹謗中傷をはじめ、医療の資材不足や感染対策のための現場負担など、数えきれないほどの困難がある状況でした。
ただ、そういった厳しい状況であっても、“患者さんを必ず救う”という医療従事者の心意気に胸があつくなりました。
そして、そのとき、私は心に決めました。
「直接患者さんに手を差し伸べることはできなくても、行政職員として、必死に働く医療機関や医療従事者の皆さんを全力でサポートしていこう」
この決意は、あの激動の時期に私に勇気を与えてくれた、大切な原点となりました。
あの春、未知のウィルスとの闘いの中で、初めて公衆衛生の現場に身を投じた日々。
混乱の中で必死に前を向こうとする人々の姿に、改めて「人として、また行政職員として」何ができるのかを考えるきっかけとなりました。

コロナ対策チームと